奥出雲・無農薬無堆肥米作り2024年の軌跡
2024年の奥出雲自然栽培米(無農薬無堆肥米)(於 島根県奥出雲町 追谷地区)ができあがるまでの軌跡を一気にご紹介しています!お米作りの秘訣や、自然の景観満載です。
3月11日種籾選別&泥水消毒&川水浸種
今年のお米作りがスタートします。
昨年、収穫した籾から種籾を選抜するため、塩水選をします。
作った塩水に種籾を浮かべると、中身の詰まった良質な籾は沈み、軽いものは浮かびます。沈んだ種籾だけを選び、水洗いしネットに入れます。慣行農法でも行う行程ですが、自然栽培ではより厳しい選別を行うため、少し濃い目の塩水で選抜します。



その後、病気対策として、種籾に感染しているかもしれない病気の菌を殺菌するため消毒を行います。一般的には60℃程度のお湯に種籾を漬け殺菌する「温湯消毒」を行いますが、今年から田圃の土を溶かした水で消毒する「泥水消毒」を行いました。
このやり方は、熱や薬剤で病原菌を殺すのではなく、多様な微生物が棲息する田圃の土を水で溶かし、その菌の働きで病原菌を抑制する方法です。
こうやって泥水消毒した種籾を田圃のある集落の上流の川に浸しに来ました。


種籾を水に浸し、発芽を促進させる行程です。
一般的なやり方だと、種籾をぬるま湯に数日漬けて発芽させるのですが、それだと水中酸素不足や熱による発芽ムラが起こりやすかったり、調整管理が難しく、特別な機械(催芽機)が必要になります。
種籾を冷たい水にじっくり当てて、種籾に水分を吸わせていきます。また、10℃くらいの冷たい水に当たることで冷たい気温に強くなり、春先の種まき後の寒さにも負けない苗が育ってくれるそうです。
4月20日苗床づくり
苗を育てるためのベット(苗床)をつくりました。田んぼの一角に、山から取ってきた赤土を盛り苗を育てるベットを作りました。そして、その上に、昨年取れたお米を”パラパラ”と巻きます。なるべく均等に撒くと、田植えの時に苗が分けやすくて、田植えがはかどります。
今年は、「たーぼー」のほか、「わがちゃん」さんと「よしにい」さんがお手伝いしに来てくれました。




4月21日 田越し
田んぼの土を耕しました。
二山耕起(ふたやまこうき)と言って、小型耕運機の中心の土を掘り起し、耕運機の両脇に山を作ります。 土を掘り起こしたら、そのまま10日前後、お日様にあてて土を干します。 土の表面が乾いたら、山の尾根部分に耕運機の中心をセットして、また掘り起こし、両サイドに山を作ります。
これをもう二度行い、土をまんべんなくお日様にあてて干します。
このやり方により、微生物が土の中の藁を食べやすくする環境を作ります。平らに耕すよりも畝のようにしながら耕すと、空気に触れる表面積が増え、酸素が好きな微生物が活動しやすくなり、土の中の微生物がたくさん増えていきます。
もう一つは、土中に混ざっている雑草の種にお日様を当てることで、種を冬眠させて、田植え後の雑草の発芽を遅らせます。 雑草よりも早く稲を育てることで、雑草にお日様が当たりにくくなり、結果的に雑草が育ちにくくするためです。




農薬を使わず、雑草を減らす先人の知恵ですね。
4月26日 苗床のようす
稲の種籾発芽してきましたー わかりますかね?


5月6日 苗床のようす
苗が育っているようです。 背が低くずんぐりむっくりな苗姿です。
慣行農法だと、稚苗(ちびょう)という10~20日くらいの幼い苗を、田植えした時に水没しないよう、なるべく背丈が高くなるように育てます。
自然栽培では、成苗(せいびょう)という50日前後の長い間、育苗し、太くて背の低いがっちりした苗を育てます。農薬も除草剤も使用しない稲づくりでは、雑草にも負けない、栄養を自分で取れる強い苗を作ることがとても大事です。
昔は”苗半作”と言い、強くて良い苗を作れれば、稲づくりの半分は終わったようなものという格言があるくらい、苗質は自然栽培にとって重要なポイントです。
よく乾いた畑のような土で苗を育てると微生物が住み着ける細根がたくさん出来てきます。畑苗代の特徴です。微生物は、土中の必要な栄養を稲に補給しながら、稲が分泌する代謝物を交換でもらい、共存していきます。
苗が強くなるように竹で圧を加えていきます。こうすると成長する植物ホルモンが分泌され、肥料がなくても、自ずと強い苗になっていきます。 去年よりも種籾の量は半分近く減らしたのですが、次回は、もう少し種籾の量を減らし、種同士の間隔を開けて、根を育てる事を第一に考えていきたいと思います。




5月12日 奥出雲からの便り
田んぼの近くにはでんでんむしが気持ちよさそうにしています。

5月20日 苗床のようす
苗床の周囲に水を張りはじめました。少し葉っぱが黄色くなり始めていて、栄養不足気味ですが、ここを乗り越えると自分で栄養を取れる良い苗になっていきます。水をあげてまた戻ってくれると良いなと。


5月21日 奥出雲からの便り
最近、コウノトリが頻繁にウチの周りで食事してます。田植えの時に会えるといいですね!

5月29日 田植え前の均し作業
田んぼを均して、代掻き(しろかき)の為に入水始まりました。



5月29日 奥出雲からの便り
こうのとりVS白さぎの絵 周辺の田んぼにコウノトリと白さぎが来ています。周辺の田んぼでは、田植え機で田植えが終わっています。

5月31日 奥出雲からの便り
苗が食われる!?
沢山たべて家族が増えるといいなぁ~

5月31日 田植え前の準備(畦塗り作業)
水の循環をイメージして、畦(あぜ)の横を掘り、畦のヘリに塗ります。 代掻きをするつもりでしたが、水がうまく回らず、畦塗り作業のみになりました。 畦塗りは、田んぼの畦に壁をつくるもので、田んぼの水抜け防止など大切な作業です。



6月1日 田植え前の準備(代掻き作業)
代掻き作業です。田車に平板をつけて水面下にある土の表面を平らにならしていきます。水持ちの良い田圃になるように、土を水と一緒に練りながら泥を作っていきます。あまり、土を練りすぎると土の団粒構造が壊れ、根張りの良くない環境になるので、やりすぎないよう慎重に作業していきます。また、土を平らにすることで、田植え後の稲と水面の高さが均一となり、稲の成長にムラが生じないようにしていきます。大切な作業です。写真左下にある田車に板をつけてひっぱり土をならしたあと、更にトンボで微調整しました。


6月2日 田植え

育った苗を、苗床からバットに移します。
バットを軽トラに乗せ田んぼまで運びます。土が水を吸っているので結構重いです。
ばば(幅)ひき
田んぼの水を抜き、田んぼに一辺が30㎝の格子状の線を書きます。線と線が交差したところに、苗を植えます。 この線がゆがむと、稲の隊列もゆがみ、田んぼの美しさが損なわれるので、こだわりの作業です。また、後々つかう田車やバインダーなどの器具は、30㎝サイズに合わせてあるので気が抜けない作業です。


田植え
1苗(多くて2苗)を指先にとって、丁寧に植えました。
慣行農法では田植え機を使います。慣行農法では、稚苗を一度に3~8苗くらい植えます。その中で育つのは多くて4苗。そのほかは稲の生理上みんな枯れてしまいます。自活力の弱い稚苗は、短いスパン(20㎝程度間隔)でまとめて植えないと雑草に負けてしまいます。強い良い苗を育てていれば1苗で充分で、その方が、のびのびと稲は根を伸ばすことができ、生育も良くなっていきます。 手植えでは、最小限の苗で済み、命(米)を大切にしているのも特徴の一つです。
お昼ご飯 奥出雲めし! うまし!!

6月6日 田植え終了
田植えも終わり、田んぼに水をはっていきます。





6月12日 田んぼの様子
田植え後、約1週間。 今年は、ヒエとコナギがびっしりと生えてきました (´・ω・`) 苗の方は数日で活着し、色も出てきて良い感じなのですが、昨年の藁が分解が進まず、草が藁を分解しながら、栄養を吸い上げている感じです。


一昨年は雪がたくさん降り、藁の分解が進んだのですが、昨年の雪は少なく、分解が進まなかったのかなと推測してます。 そして、藁を追加したのですが、その際に、前の年の藁だったので、そのままだと分解が進まなかったかもしれません。
これに米糠をまくなど、CN比(炭素と窒素の割合)の調整が必要だったと推測してます。 これだけ、田植えの時点で藁が多く浮いていたので、危ないなと思ってましたが、その通りになりました。 田車を明日か明後日引きます。この失敗で多くの糧が得られると思い、観察続けながら取り組みます。
6月13日 田車引き
本日はたくさん生えた草を取るための田車引き。縦横引きました。昨年にはなかった作業でしたが、今年は何度か必要になるでしょうか


6月15日 田車引き(続き)
今日は、縦横2回引きしました。ヒエはまだ良いのですが、コナギが待機しているので、それがどうなるか・・
(コナギ: 水田に生える雑草。酸素の少ない水田ほど繁茂してしまう。田車引きは酸素を供給する意味でも雑草対策になります。詳しくは写真の後のはっしーのコラムをご覧ください)

米作り探求家 はっしー のツブヤキ
藁が冬の間に分解されないと、地温が上がる春夏に分解が土中で急激に進み、酸素を利用してしまうみたいです。すると、酸素のない状態である還元状態になり、還元状態を好むコナギが大量発生してしまいます。水の下になると、還元状態になりやすいのですが、藁が未分解だとより、コナギが発生するみたいです。 藁は菌の餌ではあるのですが、田植え時期にまで未分解で残ってしまうと草の餌となってしまうみたいです。稲も酸素が欲しいので、藁分解に酸素を利用されてしまうと活動が鈍ってしまいます。 田車引きにより、酸素供給を行ったので、少し元気になると思われます。 また藁が土中に埋まっていながら、分解が進むとメタンガスが発生してしまいます。稲の根傷みや地球温暖化もすすめてしまいます。 光合成細菌という菌が田んぼにはいるはずなので、彼らがメタンガスを餌に光合成のサポートをしてくれる事を期待します。 ちなみに、土中ではなく、地表面に藁がある状態で分解されると、二酸化炭素が発生します。 今年は、藻も昨年の綺麗な六角構造のサヤミドロ(酸素豊富、貧栄養状態)ではなく、アオミドロ(貧酸素、富栄養状態)が発生していることから、藁がまだ分解しきれていないことを示してます。
6月18日 奥出雲からの便り
似てる!?


6月18日 田んぼの様子
田んぼにサヤミドロが出てきました。最初はアオミドロ(腐敗型)が出てきましたが、サヤミドロ(発酵型)が出てきました。酸素豊富な良い環境で出てくる藻です


6月26日 田車引き
田車横二重がけ 田車2回目 稲は順調にそだってます

7月1日 奥出雲の便り
マムシの三倍毒 ヤマカガシの赤ちゃん 野良仕事気をつけて
こちらをタップすると、その時のヤマカガシ(蛇)の画像が表示されるよ

7月5日 草取り
サヤミドロ全面に! 田んぼは良い調子です!

7月7日 事件発生!
田んぼの水が切れてしまいました。そして水切れにより藻が半分枯死しました・・・。

米作探求家 はっしーのツブヤキ
今回の対策
1.今までのパイプをサイズダウンして勢いを落とした。
2.サイフォンの原理でホースから入水。これだと草つまりなどないだろうと予想。
3.田んぼの上の鉄板の隙間を薄めにする。ビニール紐でグレーチングに取り付け
4.鉄板に草が詰まるので、大石をその手前に設置。草はそこで貯まれば草詰まり減る?ここは、やはり網が良いのだろうけど。 といった感じです。
理想は24時間ちょろちょろ入水。水が溢れるように入らなければ良いから、サイフォン式ホースでホースの本数を増やしたりして調整できたら良いなと思う。これだと草詰まりもないと思うし、少ない水でも溜まり水があれば入水出来るし。 今年の二山耕は、もう少し土を細かく耕せられていれば、コナギの種がしっかり乾燥して休眠してくれたのかなと思う。 今年は、田面が見えると直ぐに草が生えてくるんだよね。草を水没させておければ良いのだけど。
7月9日 草取り
水切れの時に、取った草が根付いてしまったので、再度草取りへ

8月28日 田んぼの様子
出穂はじまりました。ここからひと月は水を切らさないように、水を入れたり抜いたりを繰り返します。



9月23日 田んぼの様子
だいぶ育ってきました。 ”みのるほど こうべをたれる いなほかな” だいぶ育ってきました。 刈入れまであと一ヵ月。台風来ないでおくれ!!


10月13日 田んぼの様子
刈入れまであと一週間

10月18日 稲刈り ハデ干し
お米の水分量が18%前後になったので、これから稲刈りをします。
8スパーン(8軒)×6段の大きなハデを立てて、刈り取った稲を干しました。



7割ほどハデを干したところ、ハデが傾くという大アクシデントがありました。 干した稲をおろして、地域の米作りのプロに助けていただき悪戦苦闘すること2時間、何とか復旧。復旧したころは既にあたりは真っ暗でした。 やはり先人の皆さんの経験はすごい



10月20日 稲刈り ハデ干し(続き)
前日19日は、土砂降りで稲刈りはお休み。 立ち直ったハデに干して、稲刈り作業は完了です。 これから約20日ほど昼夜の寒暖差の中で、お日様の光を浴びながら、刈り取ったあともお米に養分が集まります。 慣行農法では、早めに稲を刈入れ、乾燥機で乾燥させます。ただ、乾燥機のお米とハデ干しのお米の味はまったく異なるようで、農家さんは自分たちが食べるお米はハデに限る、とおっしゃっていました。


11月10日 ハデおろし
ハデから稲の束をおろします。乾燥すると縛りが緩くなるので、ばらけないように丁寧におろします!


11月11日 稲こぎ
おろした稲からもみをとります。最低限の機械を使わせてもらいました。




稲こぎ後のワラ切りとワラを田んぼに戻します。 冬の雪の下で菌がワラを分解して、来年のお米のために、養分を土にもどします。 おいしいお米の産地が雪国に多いのは、冬の間に雪の下で菌が土をつくってくれているからみたいです。 昨年冬は雪が少なかったので、しっかり藁が分解しなかったので、今年は雑草取りが大変でした。来年はどうなるのかな。 雪、しっかり降って欲しいです!



今年は刈り入れ後に雨が多かったためか、ハデ干しだけでは、ベストの水分量15.5%~16%にはなりませんでした。なので、最終仕上げで天日干ししました。その後コンバイン袋で1週間調湿して、籾摺りして玄米になります。

来年はどんな年になるでしょう?続報をおたのしみに!
