技師道を探る会で得られるもの

 

 技師道を探る会は、企業活動を本質から捉え直す機会を提供します。第一に、変わらない条件を見極める知識探究の機会。主にオンラインミーティングを中心に、プロパガンダに惑わされずに真実を追求し、発表、ディスカッションします。そして、第二に、実際の現場に足を運び自らの目で確かめるフィールドワークとディスカッションを行います。何より重要なのは、常に自分自身の課題とリンクして考察を深められるため、上辺の理解に留まらず、腹に落とすことが可能となる点です。

本質1:変わらない条件を見極める知識の探究

 例えば、探究の土台として、地球環境問題に関する基礎知識を提供しています。環境問題については諸説紛々、賛否があるようにも見えますが、実際の所、地球環境の本当の所はどのようになっているのでしょうか。そこには変わらない実態があるはずです。その実態に最も迫れるであろう研究成果として、技師道を探る会では特に「プラネタリーバウンダリーズ(Planetary Boundaries)」という考え方についてまずは理解を深めて参りました。その探究成果の一端は下記の動画からご覧いただけます。

1.SDGsの成立と対立、および調停する視座
2.プラネタリーバウンダリーズ 全体概要編
3.プラネタリーバウンダリーズ:生物圏の保全(生物多様性)
4.プラネタリーバウンダリーズ:気候変動
5.プラネタリーバウンダリーズ: 新規要素、成層圏オゾンホール、大気エアロゾル、海洋酸性化
6.プラネタリーバウンダリーズ:生物地球化学循環、淡水の変化、土地利用の変化
1.SDGsの成立と対立、および調停する視座
2.プラネタリーバウンダリーズ 全体概要編
3.プラネタリーバウンダリーズ:生物圏の保全(生物多様性)
4.プラネタリーバウンダリーズ:気候変動
5.プラネタリーバウンダリーズ:新規要素、成層圏オゾンホール、大気エアロゾル、海洋酸性化
6.プラネタリーバウンダリーズ:生物地球化学循環、淡水の変化、土地利用の変化

本質2:実際の現場をその目で確かめ体感する

 企業活動により生み出される製品の多くは、鉱物資源を材料としています。鉱物は土から掘り起こされるものであるという事実は、決して素通りできるものではありません。資源循環を必須の課題として、実際の企業ではどのような取り組みが行われているのか。技師道を探る会では、様々な現場へ実際に赴いて理解を深めるフィールドワークの機会が提供されます。

 また、食料生産が地球環境に多大な影響を及ぼしている事、自然の循環を壊さない食料生産方法があり得るということから、技師道を探る会は、無農薬無堆肥栽培の取り組みにも共鳴しています。環境省も発表している所によると、日本の温室効果ガスの発生源は、水田が多くを占めます。水田の温室効果ガス発生の仕組みを詳しく探ると、酸素が豊富で無施肥の水田からは排出が抑制できることが示されます。参加者は実際の自然農法を体感する機会も得られます。これは単なる農業体験に留まらない本質に至りつく気付きに連なります。

「技師道を探る会」開催概要

 「技師道を探る会」2025年 塾生募集開始いたしました。

参加対象者

  • 業種、職種、役職、年齢は問いません
  • 人間としての生き方、社会の在り方、その中で自己の存在意義と役割を育みたい方
  • 異業種、異職種の人たちと意見交換をしたい方
  • N-SHIPコミュニティ会員(または入会予定者)

参加費

無料(ただし、N-SHIPコミュニティへの入会が必要です。入会につきましては、お問い合わせフォームからご連絡ください

  • オンラインで実施する講演の聴講は無料
  • 企業⾒学や現地⾒学などのフィールドワークにかかる交通費、宿泊などは実費
  • その他、インターネット利⽤料やPCなどの端末は⾃⼰負担

「技師道を探る会」テーマ

有限な資源とエネルギー、その環境の中で人間(人類)が永く生きていける社会の在り方。
そこに活きる技術(必要となる技術、技術の活かし方)とはなんだろう!

開催頻度


毎月1回水曜日 午後

Zoomあり、企業や現地への見学などのフィールドワークあり、柔軟に民主的に開催する勉強会です。

開催イメージ

皆が気になっていることを持ち寄って学びを拡げたい。参考文献を読んで、皆で気づきを交換するのもよし。有識者をよんで、講演してもらうのもよし。現地に訪問するのもよし。

一年後ぐらいには、ここで積み重ねた情報や気づきなどを冊子にまとめることで、アウトプットによる成果の定着を狙いましょう。

↓PDFで開きます↓

「技師道を探る会」参加者の声

 昨日のイベントでN-SHIPが新たに初める『技師道を探る会』のチラシをもらいました。技師道を探る会はN-SHIPが立ち上がる前に志結舎が企画して実施していた勉強会です。この会はコロナなどの事情もあり、一旦開催が出来なくなってしまったと記憶しております。その会がN-SHIPで復活するということで内心とても嬉しく思っています。しかもZOOM開催もするということで、育児と勉強がある私にとってはとても嬉しいことです。

 昨日のイベントでは技師道を探る会に一緒に参加していた ひろさん と数年ぶりに再会しました。つい懐かしい思いがこみ上げてきました。その余韻のまま、自宅に帰ってから当時のレポートなどを見返していたらとても良いことが書いてあったので、気持ちが盛り上がってしまい、「何か書きたい!!!!!!!!」という勢いで、この文章をうっているという次第です(笑)(中略)

 当時はただ興味が先行して、好奇心の赴くままに参加していましたが、いま振り返ってみると、やっぱり今の自分の土台には、この技師道を探る会に参加していたときの学びがあると感じました。

 私にとってはこの会に参加して経験したこと全てが貴重な学びでしたが、その中でも特に僕が影響を受けたかもなと思うものを2つ書きたいと思います。(中略)

 大切なヒトという観点が抜けていたことに気づいた瞬間でした。いや、頭では知っていたかもしれません。しかし、身体で理解していなかった。足元のこと過ぎて、軽く扱いすぎていたかもしれません。まずは足元を見下ろす、この感覚って本当に大切なんだなと感じたのでした。(後略)

 全文はN-SHIP会員サイトにて  

「技師道を探る会」開催記録 2018年~

2018年の発足以来、これまでに開催された「技師道を探る会」のテーマをご紹介します。
「鉄・非鉄金属・現代の資源問題」「今なお営まれる たたら製鉄にみる ものづくりの原点」「サーキュラーエコノミー」「産業生態系(インダストリアルエコロジー)」「日常品に光る技に美を見出す民藝運動に学ぶ」「鉱山・セメント・サプライチェーンの俯瞰」「江戸時代に学ぶサスティナブル」等々、また改めて再訪する機会もございますので、ぜひご参考ください。

 は主に現代の技術に関する探究は主に古来の技や自然に関する探究をテーマとしている色分けを試みておりますが、それぞれは決して無関係ではなくお互いを背景に相互に呼応するように探究して参りました

第1回 「歴史から考察する日本人の個性 ~己を知る」

国立科学博物館 
産業技術史資料情報センター長

 鈴木 一義 先生

江戸時代の日本は、260年余という世界史上に例のない平和な社会が続き、知識や技術は社会や人々の為に使われました。また自給自足の体制ゆえに、人や自然は大切にされ、地産地消(循環型)で「もったいない」のような日本独自のモノづくり文化を育み、今に繋がっています。古くから「和魂漢才」「和魂洋才」を行ってきた日本ですが、実は培ってきた和才にこそ、世界に広げる、学ぶべきものがあるのではないでしょうか。

第2回 「日本のものづくりの原点を知る、感じる」

公益財団法人日本美術刀剣保存協会学芸部たたら・伝統文化推進課長
 黒滝 哲哉 先生

たたらとは現在でもいにしえの姿が連綿と維持・継承され、毎年粛々と行なわれている製鉄の技術、ものづくりの原点である。たたらを中心に日本の歴史を再検討してみると、いったい何が見えてくるだろうか。その考察を通して、「日本」という枠組みの持つ特色を再検討してみたい。

第3回   「地球の資源・環境の実態を知る、学ぶ」

資源・環境ジャーナリスト
 谷口 正次 先生

「地球の資源と環境には限りがある」ということを認めず、植民地時代と変わらず経済成長と進歩を結びつけ、現実を見ずに数字上のものばかり追い求めている断絶の時代。世界の実態を踏まえつつ、今回はニューカレドニアにフォーカス。世界有数の植物多様性を持つ豊かな森を次々破壊し、ニッケル鉱山開発が行われている実態。そこに暮らす先住民族カナック族の自然観と死生観を学びながら、よりよく生きるための考えを深めていきましょう。

第4回 「ものづくりの原点、持続可能な社会を体感する」

(島根県雲南市)

● たたら製鐵の歴史、たたらが育んだ技術、人々の暮らしと文化に触れる
● たたら製鐵操業見学

奥出雲地方は、たたら製鉄によって棚田や薪炭林など、人の手が入り里山の自然が維持されてきた結果、生物多様性の豊かな環境が保たれてきました。そこで操業される国内唯一の非公開神事であるたたらの神秘に触れ、ものづくりの本質・原点を感じて頂ければと思います。

第5回 「懐かしい未来 〜過去を観て時代を考察する」

資源・環境ジャーナリスト
谷口 正次 先生

「確かな未来は懐かしい過去にある」
 今、我々が未来に向かって考えるべきこと。それは過去をしっかり知ることで、そのヒントがもらえる。
 2回の講演研究会と、たたら製鐵操業見学を踏まえて、【懐かしい未来】をテーマに、技師の道を探っていきましょう

第6回-1「日本が育んだ産業生態系と資源循環を知る」

● オリックス資源循環株式会社様またはリサイクル企業(埼玉県寄居町)訪問

産業のサプライチェーンの下流であり上流でもあるリサイクル現場を見学。当該訪問先は、資源を再利用する上で、最後の砦とも言うべきところに位置している。現場では何が起きているのだろうか!?

第6回-2 特別企画「無線通信の変遷史から観る日本人の強みを知る」

 NTTドコモR&Dセンター様および横須賀リサーチパーク(YRP)様訪問

産業革命以降の世界の無線通信の技術革新と、そこに観る日本人の強みを考察する。2020年に本格化する通信方式5Gで暮らしはどう変わるのか。そして6Gのゆくえは?

第7回-1 「人の想いと技が繋ぐ大事なこと(職人編)」

● 三上貞直日本刀鍛錬道場(広島県北広島町)訪問

刀匠と名高い三上さんが、なぜ自らたたら製鐵の操業を続けているのか!?実際に鍛造を体験し、そして日本刀を触り、ものづくりの魅力を体感し匠の思いを伺う。

第7回-2 「鉱山と資源のサプライチェーンを知る」

● 宇部興産株式会社様 伊佐セメント工場、宇部セメント工場 訪問

実際の資源(石灰石)の採掘現場の見学と、その採取した資源を原料としたセメント工場を見学する。セメント製造を知り、産業を横断した資源循環を俯瞰する眼を育む。

第7回-3 自主研究:「先端技術活用の表と裏」

● 広島平和記念資料館自主見学

誰でも一度は訪れたことがある原爆資料館。技師道を探る活動している今、何を感じるか。改めて技術の平和活用を考える。

第8回 「近代製鉄と資源再生の取組み」

● 日本製鉄株式会社 名古屋製鉄所様(愛知県東海町)訪問

資源の入り口である製鐵現場を見学。たたら製鉄との対比により、産業革命以降の技術発展を観て何を感じるか。大量消費,大量廃棄の現代社会のサプライチェーンを大局的な観点で学びを深めます。

第9回 「長寿企業の特徴、経営理念から持続可能性の要素を考察する」

● 株式会社関ヶ原製作所(岐阜県関ヶ原町)訪問

「限りなく人間ひろばを求めて」のコンセプトを掲げ、地域に密着した人間中心の経営哲学を持つ関ヶ原製作所。その経営理念と仕事環境に触れる。

日本経済大学経営学部 学部長
 後藤 俊夫 先生

 1000年以上21社, 500年以上147社, 300年以上1938社、日本は世界に類を観ない長寿企業大国。日本の企業経営の研究に長年取り組まれてきた、後藤俊夫先生をお招きして、関ヶ原製作所の理念と照らして、持続可能性を高める要素を探っていきましょう。

第10回-1 〈第1部〉 お金とは何か?お金の本当の歴史、存在、意味、力
〈第2部〉 お金、経済、資本主義。僕たちはどこへ向かっていくのか!?

株式会社サステイナブル・インベスター  社長
 瀧澤 信 様 講演

お金とは何か? 経済とは何か? 我々が追い求めている経済成長、その根本である金融経済の根本を知る。

第10回-2 「大自然の中の一つの生命体である人間の存在」

ドキュメンタリー映画「うみやまあいだ」の鑑賞。地球と人間、地球と社会の関係を改めて俯瞰する。

第10回-3「人間の感じている環境情報」

資源・環境ジャーナリスト
 谷口 正次 先生

人間の5感では捉えられない事象にこそ、人間が地球上生命体として自然とともに活きていくヒントが隠されているのではないか。見えていないものを観ること、観ようとする意思を持つことで、今後(2年目)の参加者の興味と視野を広げたい。

第10回-4「技師道とは何か!」 技師道を探る

株式会社志結舎  代表取締役社長
 関口隆

技師道について、各自の考えをまとめミニプレゼンを実施。 今までの学びを共有し、技師道を探る。

第11回 「生命体人間の感じ得ない世界への挑戦」

東京大学 先端科学技術研究センター所長
 神崎 亮平 教授

人間の五感では感じ得ないさまざまな情報も、近代のセンシング技術において検知可能になってまいりました.現在行われている最先端研究を元に、これからの技術活用の方向性について考察してまいります。

第12回-1「日本の民藝運動に学ぶ価値の本質」

真宗大谷派大福寺住職, となみ民藝協会会長,日本民芸協会常任理事
 太田 浩史 様

第12回-2「物の流れから学ぶ産業のサプライチェーンと伝統技術と日本の文化」

佐々木寺社建築株式会社
代表取締役社長
 佐々木 利幸 棟梁
株式会社島田木材代表取締役社長
 島 田  優平 様

● 株式会社松井機業 訪問
● 世界遺産・国指定史跡相倉合掌造り集落  合掌民宿 長ヨ門宿泊

第12回-3「小規模多機能自治、地方行政改革から見る将来の方向性」

南砺市政策参与
南砺幸せ未来基金理事長
南  眞司 先生 ほか

技師道とは?

 

「技師道」は、一人ひとりの今と未来に無関係ではありません。聞きなれない「技師道」という言葉が持つ意味について探りましょう。

A4 2枚分のPDF・印刷版はこちらをクリックしてください

1.誰もが「技」を持っている

 現代において一般的に「技師」と言えば、「放射線技師」「臨床検査技師」など医療技術者を指すことが多く、また「技術者」と言えば、工学や情報分野の開発者を指すことが多いでしょう。

 しかし、多くの人々が様々な技術に触れ容易に扱えるようになった今こそ、私たちは自らを技術を持つ者として自覚する時が来ていると考えます。科学や工学的な分野に限らず、個々人が持つ経験則も「技術」、「技」として認識することができるのではないでしょうか。

 また、「技術はあくまで手段に過ぎず、それ自体に目的はない」という捉え方もあれば、「技と目的は一体である」という捉え方もあります。  例えば、仏像を彫る時、職人は「木の方からこのように彫るべし、と語り掛けてくる」といった、技と物とが一体となって成立する世界もあるのです。

 いずれにしても、作為を加える対象はありのままの状態、つまり「自然」な状態です。そうであるならば、「技」は、何を目的として用いるべきなのか、その目的の吟味、とりわけ「自然」との対話なくしてはその本質に辿り着くことはできないのではないでしょうか?

2.「技」を伝える「師」

 次に、「技」は個々人が有しているだけでは、大きな事業は為しえません。他の人々と分かち合い伝えて行くことによって発展してきたのです。そこで「師」が必要となります。

 「師」とは、『大辞林』によれば、「子弟を教える者。人の手本となる人。先生。」を指します。また、「師」とは古くは奈良・平安時代以来、プロフェッショナルを指す接尾辞でもあります。

 たとえば、管理職やリーダーとして「科学技術」や「マネジメント技術」を利用することで個人では為しえない事業を推進する場合、その全体を「技」と考えることもできます。事業推進の過程では、「師」たる自覚も必須となるのではないでしょうか。このように「技師道」の「技師」とは、個々人が持つ「技」を一般化・共有・伝達する人(師)を指します。なお、「技師」とは、戦前では軍事を含む専門的な技術を管理する官職、今でいう「技官」を指していました。しかし「技師道」はもちろん、単に戦前に回帰することを是とするものではありません。過去に学び未来を探ることを目指すものです。

 古くから伝承されてきた技術は、一体なぜ現代においても尚そのままの姿で残ってきたのでしょうか?現代が発展の裏で直面する技術がもたらす様々な課題(サスティナブル、SDGs、CSR、エコロジー等)を解く鍵は日本に古くから伝わる「伝統的なものづくり」に強みを見出すことにあるのではないか、と「技師道を探る会」は考えてまいりました。

3.原点・伝統に学ぶ「道」

 師匠から弟子へと受け継がれてきた伝統的な技には「茶道」「剣道」「柔道」などにみられるように、「道」という文化には今でも学ぶべきものが多くあります。「道」と称される文化は、単に技を教え伝えることに留まらず、作法を体得し、実際に踏み行うべき道理を伝えてきたからこそ、連綿と続いてきた、ある種の道徳性を備えているものです。いわば「倫理観」を有することで、単なる技の伝承が芸術的な価値を持つに至っているのです。そのような意味で、江戸時代の商人道徳を説いた石田梅岩や近江商人による「商人道」は今日でも尚より一層、学ぶべき価値のある例でしょう。

 人と人とが同じ空間に集う限り、倫理、道徳、つまり「道」は意識されてしかるべきではないでしょうか。

技師道とは

 以上のように技師道」とは、「技」を扱い伝え広げる人々が歩むべき道、と定義することができます。ここでは敢えて一文字ずつ取り上げて分析的に考えてきましたが、本当はこれらが一体となっており、様々な見方ができる多種多様なものではないかと考えるのが「技師道」の世界観です。「技師道」なる道があるのか、あるとすればどのようなものか?皆様と探り、切り開いて参りたいと考えています。特に、全ての根幹たる、自然・歴史・倫理と向き合う事によって、月一回、本質に立ち返るひとときをいかがでしょうか?