2004年の設立以降、水分子活性化の技術を軸に、環境・流通・食・美容・医療などの業界に参入。
人々の生活の質(QoL/Quality of Life)を高める製品開発を行っている。
会社ウェブサイト:
https://www.denba.co.jp/
新経営研究会 イノベーション・フォーラム 今村龍男副社長講演レポート(2026/6/8)

ふるえる水が世界を変える― 食品、物流、健康を支えるDENBAの技術とは
1か月以上を海の上で過ごす外航船で、新鮮な野菜や果物がいつも食卓に上る。
急速冷凍なしで、旬の海の幸を1年中楽しめる。
全治1年以上と診断されたケガから、想定を上回るスピードで復帰したアスリートがいる。
一見して共通点のない3つの事柄。これらを結びつけているのは「DENBA」(デンバ)という1つの技術だ。
野菜や果物、魚介類、そして人。共通するのは「水」である。量の違いはあっても、すべては水を含んでいる。その水へと働きかける独自技術をもとに、食品、物流、健康と業界を超えて事業を展開しているのがDENBA JAPAN株式会社だ。
2026年6月8日(月)に開催された新経営研究会「イノベーションフォーラム」において、DENBAが持つ独自の技術と、今後の展開について今村龍男副社長に話を聞いた。
なぜ、船上の野菜は長持ちするようになったのか
長い期間を洋上で過ごす外航船では、野菜や果物などの生鮮食品は、出航から2週間程度で食べきるのが常識だった。それ以降は日持ちのする食品や、冷凍保存できる肉・魚でどうにかしのぐしかない。満足とは言い難い海の上での食糧事情を目の当たりにしてきたのが、伊藤忠商事で長年船舶関連の業務に携わってきた今村副社長だ。

何十億円もの価値がある船舶を任される乗組員にとって、栄養バランスの偏った食生活は、安全運航にかかわる重大な問題となりかねない。また、各国の港湾局による船舶のチェックは、SDGsという世界的な号令のもと年々厳しくなっていた。
貯蔵庫に腐った食品が入っていれば、問題になる。
だからといって食品を減らせば、乗組員の健康管理が不十分だと判断される。
審査が通らず入港が許可されないと、企業にとっては1日100万円もの損失につながる。
そこで、当時からその技術を知っていたDENBA JAPANに協力を仰ぎ、外航船の食品貯蔵庫に生鮮食品の鮮度を保持する「DENBA + Marine」(デンバ プラス マリン)を設置した。
幅30センチの箱型の装置を置き、1畳にも満たない放電マットを貯蔵庫に数か所貼り付けるだけで、乗組員は乗船から1か月経っても新鮮な野菜や果物を食べることができるようになった。 今では500隻以上の船舶に、この機器が導入されている。
水をふるわせる「DENBA空間」とは
いったいDENBAとはなんなのか。
DENBAを漢字にすると「電場」となる。
DENBAの放電装置を置くと、その周囲には電気的な作用を持つ空間が生まれる。DENBAは、これを「電位空間」と呼ぶ。この空間の中では、食品や人体に含まれる水に、細かな振動が生じる。
DENBA製品の特徴は、この空間そのものと言える。つまり、期待する効果を得るために食品や人が装置に直接触れる必要はなく、空間内にいればよい。
その背景にあるのが、DENBA独自の「単極・低周波」の技術だ。一般的なプラス・マイナス対極型の装置とは異なり、設置場所に合わせてマット状や棒状など自由な形にできるうえ、感電リスクも低い。発泡スチロールや段ボール、ビニール越しでも作用するので、食品ならば梱包したまま鮮度保持が可能となる。
食品保存から、冷凍、物流、農業へ
長い航海を支える鮮度保持の技術は、もちろん陸でも威力を発揮する。
飲食店の冷蔵庫や、スーパーの生鮮食品コーナーでは、傷みやすい食材を長持ちさせ、食品ロスの削減や購買率向上に役立っている。 農業用コンテナや輸送トラックにDENBAを設置すれば、農作物の価値を落とさず生産地から遠くの消費地まで輸送が実現する。
鮮度を保つDENBAの技術は、食品の冷凍・解凍時にも大きく貢献している。
これまで、素材の味を損なわないためには、専用の大型装置を使ってマイナス30度以下で急速冷凍を行うのが当たり前だった。それは、解凍に関しても同じことだ。業務用の急速解凍機設置には、スペースと設備投資が必要となる。
だが、緩慢冷凍しかできない冷凍庫や、業務用冷蔵庫にDENBAの電位空間ができることで、急速冷凍・解凍と同等、あるいはそれ以上のメリットが期待できる。この空間を冷凍・解凍・保存とうまく活用すれば、その食材が一番おいしい旬の時期にまとめて収穫し、次の旬まで変わらないおいしさを楽しめる。
その代表例が岡山産の牡蠣だ。2月、3月の旬にまとめて収穫された牡蠣は、1年を通じて東京の高級レストランで提供される。
保存や輸送だけではない。DENBAは現在、農業分野での利用も進められている。種の発芽率や苗の生育を高める効果が確認されており、今後は生産から、輸送、保存に至るまで一貫して、DENBAの技術が食を支える日も近いかもしれない。
ここまで見てきたように、DENBAは食品の世界で活用の幅を広げてきた。しかし、DENBAが働きかけるのは食べ物に含まれる水だけではない。人の体もまた、半分以上が水でできている。 その水がふるえると、人は一体どうなるのだろうか。
人の中の「水」に働きかける
DENBAが一般の注目を集めるようになったのは、パリ五輪の団体・個人総合で金メダルを取った男子体操の岡 慎之助選手がきっかけだ。
2022年、パリ五輪を2年後に控えた全日本選手権で、岡選手は右ひざ十字靭帯断裂という大けがを負う。治るまでには1年以上かかるとも言われたが、「DENBA Health」(デンバ ヘルス)を活用しながらリハビリを続け、競技復帰を果たした。現在もウォーミングアップや、トレーニング後のクールダウンに活用しているそうだ。
食品と人、それぞれの機器の見た目や仕組みはそう変わらない。箱型の装置とマットによって電位空間を作り出し、人はただその空間で過ごすだけだ。DENBAによれば、体内の水分がふるえることで、血流や筋肉の状態に変化が現れるという。
その中でも最も注目すべきなのは、自律神経に関する研究だ。
東京大学との共同研究では、DENBA空間に15分滞在することで、交感神経と副交感神経の双方が活性化する傾向が確認された。
年齢を重ねると、自律神経は徐々に働きが低下していく。すると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできず、眠りが浅くなる、朝すっきり起きられないといった不調につながる。
他の研究では、DENBA Healthを利用すると、被験者がより短時間で深い睡眠へ到達する様子が見られたという。利用者からは「深く眠れるようになった」という声が多く寄せられている。
睡眠の質は日々の体調に直結する。そのためDENBA Healthは、体が資本のアスリートだけでなく一般利用者にも広がりを見せている。
その効果を気軽に試せるよう、DENBAはホテル業界とも連携する。現在、APAホテルと提携し、全国36拠点160部屋で「グッドスリーププラン」を提供している。素泊まりに1000円足すだけという気軽さで、同プランをリピートする宿泊者も多い。
また、新たに企業向けにサブスクリプションサービスも始まった。
福利厚生として、持ち運びがしやすい「DENBA Mobile」(デンバ モバイル)を導入する企業が増えており、すでに4000台以上が採用されている。その根底にあるのは、従業員が不調を覚える「前」にDENBA空間でリラックスし、仕事の効率アップや、自宅でのしっかりとした休息につなげようという考えだ。
船の食品貯蔵庫から始まったDENBAの技術は、鮮度保持、冷凍、物流、そして健康へと活用の領域を広げてきた。今後はペットや発酵、生産の現場など、新たな分野への応用も始まっている。
食品や人に共通する「水」に着目した発想は、1つの技術となり、分野をまたいだ課題解決へとつながった。「ふるえる水が世界を変える」――その技術は次にどんな未来を見せてくれるのだろうか。

文・写真/原 美奈
